よみもの

内的家族システム療法(IFS)とは? イラストを使って簡単に解説

sushino

内的家族システム療法(Internal Family System/ IFS)は、心の様々な部分(パーツ)が、まるで家族にように相互に影響しあうシステムとして捉え、それぞれのパーツを理解し、愛着の傷つきやトラウマを癒やすことを目指す心理療法です。

日本での普及度はまだ限定的で、徐々に広がりつつある状態です。今回は私がIFSについて学んだことを少し書いていきたいと思います。

内的家族システム療法をざっくり解説

日本語でのIFS解説書がまだ少ない中で、とても分かりやすいと思ったのはこちらの本です。

私の中に住む人たち: IFS(内的家族システム)へのお誘い(後藤ゆうこ/有限会社プラトニックウェーブ)

created by Rinker
¥1,100 (2025/10/25 12:39:26時点 Amazon調べ-詳細)

38ページで1,100円なので「ページ数のわりに値段が高い」というレビューも複数ありましたが私は思い切って買ってみてよかったです。イラスト解説もわかりやすかったです。

本書をもとに、IFSについて少しご紹介したいと思います。

自分の中にはパーツがたちが住んでいる

IFSでは、一人の人間の中に複数の人格がいるという考え方をします。それを「パーツ」と呼びます。パーツたちはそれぞれ異なる役割を持ち、何かの目的を持って動いています。それらは思考・感情・動き・身体的症状といったさまざまな姿で現れます。

↓たとえば、こんなことありませんか?

何かにイライラしていたら、今度はそんなイライラしてる自分に腹が立ってくる…。かと思えば、今度は「私何やってるんだろう…」という悲しみまで湧いてくる。

するとだんだん「なんか、もうどうでもいいや」という気持ちも加わってきて…。ついには「こんなグチャグチャした気持ちになるのは、全部自分のせいだ」という気持ちまで登場。

こんなふうに、私たちの中には複数のパーツがせめぎあっています

パーツの種類

パーツは「エグザイル(追放者)」と「プロテクター(防衛者)」という2種類のものに分かれます。

エグザイル(追放者)

エグザイル(追放者)とは、過去のつらい体験の記憶の断片を持っている幼いパーツで、インナーチャイルドと呼ばれることもあります。

大きな悲しみや痛みを抱えており、その感情が全体を圧倒してしまうことがあります。心の安定のために、いないことにされる=追放されたかのように扱われています。

プロテクター(防衛者)

プロテクターとは、自分を守ろうとしてくれる防衛パーツの総称です。

プロテクターは、普段から自分を管理してくれる「マネージャー(管理者)」と、自分が驚かされたときに出てくる「ファイヤーファイター(消防士)」の2つに分かれます。

マネージャー(管理者)

マネージャー(管理者)は日常のいろいろな役割やタスクをこなしているパーツのこと。不快な感情や圧倒されるような状況をあらかじめ防ぐために、先回りして対応しています。

たとえば、危険を予知して対策したり、完璧に物事を遂行しようとしたり、コミュニケーションでは自分を取り繕ったりします。

マネージャーを担うパーツはひとつだけではなく、役割の数だけ細分化しています。先ほどのように「完璧主義者さん」「危険予知さん」「八方美人さん」など、あなたが必要なだけマネージャーは存在しています。

ファイヤーファイター(消防士)

ファイヤーファイター(消防士)は、予期せぬ事態によって、エグザイルの持つ過去の痛みが刺激されたとき、その感情を紛らわそうと衝動的に現れるパーツです。不快な火種をできるだけ早く消し去ろうとします。

ストレス解消のために暴飲暴食したり、現実逃避のためにネットサーフィンしたり、急にボーッと眠くなって気を紛らわそうとしたり…。ファイヤーファイターにも、役割によってパーツがいくつも存在するのです。

パーツを排除するのではなく耳を傾ける

一見悪く思えるパーツでも、あなたを守り大切にしようとしています。あなたのために、役割を全うしようとしているのです。

本などで紹介されているIFSのワークは、自分の中にいるパーツと対話する瞑想のような手法が主です。たとえば、いま話をしたがっているパーツはどれだろう…などと感じてみます。怒っているパーツなのか、泣いているパーツなのか…など。

抽象的な話に聞こえますが、しっかりとした手順があります。私は、IFSは回復の方法がきちんとパッケージ化されている点も良いと思いました。

働きすぎているパーツや、暴走しているパーツは、精神的・身体的苦痛を生んだりします。それは、一生懸命に役割を果たそうとしているからです。あるいは、あなたにわかってほしい、聞いてほしいことがあるのかもしれません。

パーツの思いを聞くことで、彼らは安心していきます。そして、今の辛い役割をやめて、新しい役割を見つけます。IFSはパーツを消すという方法はとりません。パーツたちに「あなたを守る新しい方法」を与えていくのです。

パーツたちによる”チーム自分”がだんだんかみ合っていくと、心の安定に繋がっていくのです。

セルフ(大きな自己)とは

IFSにおいて、自分を構成する要素には「パーツ」の他にもうひとつ、「セルフ(大きな自己)」というものがあります。

セルフ(大きな自己)とは、意識の根底に存在する本来の自己のことです。温かく包容力があり、太陽のような存在ですが、心を守る防衛者のパーツたちによって雲のように覆い隠されてしまうことがあります。

私たちが「セルフ」の状態でいられるとき、好奇心や穏やかさなどの誰もが持っている気質を表に出すことができます。IFSは、パーツの声を聞き、苦しみを紐解いていくことで、「セルフ」の状態としていられることを目指します。

理解を深めるために

私が最初にIFSの内容に触れたのがこちらの動画です。

これを見て「私は矛盾してていいんだ」「自分がいろんな声を内に持ってるのは当然なんだ」と膝を打ちました。特に「飲みに行きたい自分と、そうじゃない自分がいる」っていう例え、あるあるな感覚ですよね…。

そしてなにより、自分自身の解離への解像度が上がったというか、自分のパーツを意識すると、意外と「それぞれの私が言いたいことがある!」という感覚が湧きました。

それから、こちらの本↓も読みました。

「悪い私」はいない 内的家族システムモデル(IFS)による全体性の回復(著:リチャード・C・シュワルツ , 翻訳:後藤ゆうこ, 佐久間智子 , 後藤剛 /日本能率協会マネジメントセンター)

これは翻訳書で厚いので、少し読みにくいかもしれません。こちらはIFSの提唱者本人が書いた本なので、もちろん勉強にはなります。回復のためのワークもたっぷり載ってます。

最初に紹介した『私の中に住む人たち: IFS(内的家族システム)へのお誘い』にもワークが載っていますので、まずはこちらをやってみてもいいかもしれません。

created by Rinker
¥1,100 (2025/10/25 12:39:26時点 Amazon調べ-詳細)

とはいえ自分ひとりではワークはなかなか難しいでしょう。セラピストさんに繋がれるHPも貼っておきますね。→日本IFSネットワーク

それでは、またIFSまわりの新しい知識が増えたら記事にしていきますね。お読みいただきありがとうございました。

あわせて読みたい
【イライラ、不安、無気力…】ポリヴェーガル理論とは?『ポリヴェーガル理論がやさしくわかる本』
【イライラ、不安、無気力…】ポリヴェーガル理論とは?『ポリヴェーガル理論がやさしくわかる本』
あわせて読みたい
離人症経験者のメンタルコーチが語る「離人症克服法」とは
離人症経験者のメンタルコーチが語る「離人症克服法」とは
ABOUT ME
すしの
すしの
離人症当事者
離人症と緊張に悩む人。 Xアカウントで離人症の不満とかを発信。
Kindleにて漫画とエッセイをセルフ出版している。

【漫画】『離人症のおはなし』『離人症のおはなし②』
【エッセイ】『離人症です。』『精神科とカウンセリングに通ってみた話。』
記事URLをコピーしました