【離人症の研究紹介】痛みをイメージすると、“自分の体”の感覚が弱くなる【広島大学のVR実験】
今回は2025年04月23日に広島大学のHPに掲載された『【研究成果】痛みのイメージを関連付けた仮想身体では、「身体所有感」が抑制されることを発見 仮想現実実験が示唆 ~自己身体認識に関わる新たな知見~』を紹介します。
やさしい言葉を使い、とてもライトに紹介しますので、きちんとした内容を知りたい方は元記事をお読みください。
私はこの実験を「QLifePro」という医療情報サイトのニュース記事で知りました。研究の元記事よりも読みやすいと思います→離人症の身体所有感、否定的認知が抑制する可能性-広島大。
実験の概要
- 研究機関:広島大学 大学院人間社会科学研究科
- 研究者:
特任助教 山本一希氏(研究当時:日本学術振興会特別研究員)
教授 中尾 敬氏 - 掲載誌:科学雑誌『Frontiers in Psychology』(2024年12月23日付)
- 論文タイトル:
“The manipulation of top-down interpretation as one’s symptomatic body reduces the sense of body ownership”
DOI: 10.3389/fpsyg.2024.1399218
何がわかった?
VR(仮想現実)の中で“自分の体”を見たときに、「この体が痛い」と思いながら見ると、その体を「自分のもの」と感じにくくなることがわかりました。
実験のやり方
参加者はVRゴーグルをつけて、仮想空間の中に仮想の体を見ます。自分の体と、仮想の体の背中を同時に触られることで、「その仮想の体=自分の体だ」と感じる“錯覚”が起こります。

そこで研究チームは、参加者に2パターンの考え方をしてもらいました。
- 🟢「これは自分の体だ」(普通の状態)
- 🔴「これはお腹が痛い自分の体だ」(痛みをイメージした状態)
そのあと、仮想の背中にナイフが刺さる映像を見せて、体がどれくらい反応するか(汗腺の反応)を測定しました。

実験の結果
「お腹が痛い自分の体」だと思いながら見た人は、そうでない人よりも反応が弱く、“自分の体”だと感じにくくなっていたのです。
つまり、「体へのネガティブなイメージ」は、身体所有感(=自分の体を自分のものだと感じる感覚)を弱めることがある、ということが分かりました。
どういう意味があるの?
この結果は、「離人症」と呼ばれる状態の理解にもつながるかもしれません。離人症では、「自分の体が自分のものじゃない」「現実感が薄い」と感じることがあります。
研究チームは、今後は「肯定的なイメージ」や「中立的なイメージ」でも同じ効果があるかを調べ、離人症などの治療法に活かせる可能性を探っていくそうです。
まとめ
- VRの中で“痛みを感じている自分”を想像すると、「自分の体」という感覚が弱くなる
- 自分の体への否定的なイメージが、体の感覚や自己認識に影響を与える
- 将来的には、離人症など「自分の体を感じにくい状態」の理解や治療につながるかもしれない
私の感想
自分への否定的なイメージが自己所有感を弱める、という部分には心当たりがありますね…。
離人症発症当初には「私ってダメな存在なんだ、いないほうがいいんだ」あるいは「しんどい思いしたくないからこれが私じゃなければいいのに」という感覚があった気がします。
それをちゃんと認識してたり、言語化したりしてたわけじゃないですけど。私のその感覚が、この実験と繋がってる!と胸を張っては言えないですが。
この研究の重要な理論的背景として、先行研究の『Hunter, E. C. M., Phillips, M. L., Chalder, T., Sierra, M., & David, A. S. (2003). Depersonalisation disorder: a cognitive–behavioural conceptualisation. Behaviour Research and Therapy, 41(12), 1451-1467. doi: 10.1016/S0005-7967(03)00066-4』があるとのこと。
↑「この研究では、離人症の人々は自分の症状のある身体に対して否定的な解釈を持つ傾向があり、これが身体所有感の欠如につながる可能性が示唆されています」ということですが、興味のある方は私のかわりに調べてみてください。
海外の離人症研究について調べる自信は全然ないのですが(気が向いたらやってみたい)、こうやって日本での研究結果が読めるのはありがたいことです。他にも探して記事にしてみますね。


※研究内容の要約にはAIを使用しています。